*夕立*
 THEINTERVIEWS 「300字小説」 グループインタビューにて --- 2012.12.10 [299字]



 まずいな。西の空が暗い。今日は傘を持っていないし、降られると厄介だ。
 仕事帰りの電車内で、俺はそんな事をぼーっと考えていた。実際走ればなんとかなるので、大して困ってはいないのだが。
 地元駅に着いてみると、駅は真っ黒な雲で覆いつくされていた。空からは雨がさながら滝のように打ち付けている。
「これは…無理だな」
 早々に戦意喪失した俺は、内ポケットから携帯を取り出した。援護要請のメールを打つより他無い。
『ごめん、今駅なんだけど―――』
「コウくん」
 豪雨の中呼ばれた気がして顔を上げると、大きな傘を差した彼女が立っていた。
「ははぁん、今のメール、もしかしてあたし宛てだね?」
 嗚呼、彼女には敵わないな。


-fin-