*夏の終わり*
 THEINTERVIEWS 「300字小説」 グループインタビューにて --- 2012-08-28 [300字]



「お先失礼します」
 終業のチャイムが鳴り、一人、また一人と消えていく。俺は深い溜息をついて窓の外を見た。外はまだ明るい。
「よう。残業?」
「まぁな」
 同僚の村上だ。村上とは何を話すでもなく屋上で一服するのが習慣になっている。鉄の扉を開けるとムワッと生暖かい風に包まれた。
「まだ暑いなぁ」
「だな」
 ふぅと息を吐き出すと薄い水色した空に煙が溶ける。この時間は嫌いじゃない。
「朝晩は寒い日もあるけど―――あ」
「どした?」
「この時期の夕焼け空って好きなんだよなぁ」
「へぇ」
 村上が柄にもなくロマンチックな事を言うもんだから、思わず笑ってしまった。
「なんで笑うんだよ」
「いや、別に?」
 この時間は、嫌いじゃない。


-fin-