*花火*
 THEINTERVIEWS 「300字小説」 グループインタビューにて --- 2012.08.17 [300字]



 辺り一面、火薬の匂いがする。川辺は静まりかえり、路は屋台のゴミで溢れかえっていた。転がるかき氷の容器を蹴飛ばす。カランと軽い音をたてて飛んでいった。

 俺は花火大会というものが嫌いだ。煩くて、バカみたいに人が集まって、路だってこうやって汚れてしまう。家が会場の近くだととにかくいい事がない。

 ただ、終わった後のこの感じは嫌いじゃない。ひどく静かな、さっきまでの喧騒が嘘のような、静かな時間。さっきから若者達が花火大会の続きをしている。

 ―――今日の花火大会は、彼らにとって良い思い出になっただろうか。ふとそんな事を思う。
 漂う火薬の匂いと、耳の奥で残る風物詩の音。どこかで小さく小さく虫が鳴いている。


-fin-